スーパーグッド(2018/1/1)
いつだって行き交う人の絶えない西荻窪の駅前から伸びる商店街も、あちこち照明が消えひっそりとしているのは今日ぐらいなものだ。
元日。
あけましておめでとうございます。
新年の空気を吸いに、外に出よう出ようとしていたら結局夕方になってしまうという、わたしだけは通常営業。
ポケゴーを起動しながらガランとした通りを歩いて抜けていく。
駅には初詣に行くのか初売りに行くのか、明るい声を立てるこども連れの姿や若いグループがほかほかした顔ですれ違う。
彼らのお陰でわたしにも正月がやってきたようだ。
コンビニで納豆とだしの素とカフェオレを買った。
まだ18時前だと言うのにコンビニ以外の店舗は真っ暗だ。
そう、お正月くらいはみんな休むべき。
コンビニで買い物をしておいてよく言うが、みんなで一斉にお休みする日はあったほうが絶対に良い。
ほんの少しの買い物を済ませ、来た道を戻る。
本当に人が少ない。
「お昼はグダグダとして街に繰り出すのはいつも夜だからわたしにとって夜が遊び場」だと、と大好きな永原真夏が言っていた言葉を思い出す。
ふと、音沙汰の「SUPER GOOD」を口ずさむ。
うんいい感じ。
ひっそりとした元日の東京の街を、風邪でしゃがれた声が、足跡をつける。
「一歩踏み出すたんび足がすくむ、ワクワクと同時にいつも何か捨ててるわ」
まるでビールでも飲んでいるかのように、コンビニのカフェオレを掲げる。
小さくステップを踏みながらフラフラと。
両側にひしめき合う店々が笑っている気がする。
アルコールが飲めないわたしはいつだって酔っぱらえる。
アルコールを飲まないと酔っ払わない人の気持ちはわからない。
こんなに静かなこの道はなかなかないぞ!そうだ!写真取らなきゃ。
左手にコンビニ袋、右手にカフェオレとスマホ。
唇にはSUPER GOOD。
スマホを高く持ち上げて写真を取ろうとしたら、カフェオレが静かにわたしに向かってこぼれ出した。
すっかり暗くなった夜の気配には、白いニットにふりかかるカフェオレもよく見えないし生ぬるい甘い匂いがおかしくて。
クスクス。
うふふふ。
あぁ、あけましておめでとう。
今年もよろしくね。